先日、株式会社アーティクスで沖縄の海を使った撮影講座を実施しました。日中ではなく、夜の海です。
海に入って光を扱う撮影は、機材の制約も安全管理も、普段の撮影とはまるで違います。どういう場所で、どういう考え方でやったのかを書いておきます。
昼はジェットスキー、夜は撮影の海
撮影地は、日中はマリンアクティビティの事業者さんが営業されている海域です。オーナーさんに共催という形でご協力いただき、営業時間外の夜間にお借りしました。
日常的に人が出入りし、管理されている海です。手つかずの自然に踏み込んだわけではありません。ジェットスキーの発着に使われている浜なので、生き物が繁殖の場に選ぶような環境でもない。
そして何より、海の状態を誰よりも知っている人が現場にいてくれる。これがこの撮影を成立させた一番の条件でした。
その日の潮、うねり、どこまでなら入っていいのか。こういう判断は、外から来た撮影者だけでは絶対にできません。
ちなみにこのオーナーさん、今回の講座を受講してくださった一人でもあります。今後はこの海をフィールドに、撮影事業も展開していかれる予定です。地元の海を知り尽くした人が撮影の技術を持つ。これは私たちがずっと理想としてきた形のひとつです。
海に対して決めていたこと
前提として、海に負荷をかけてまで撮る必要のある写真はない、と考えています。条件が揃わなければやめる。そこから逆算して組み立てました。
決めていたのは次のようなことです。
- 水中に入れる光源は防水LEDだけ。発熱する照明機材は一切使わない
- LEDは点けっぱなしにせず、撮る瞬間だけ、最小限の光量で使う
- ストロボはすべて水面より上に設置し、水中では発光させない
- サンゴや海草には立ち入らず、砂地だけで撮る
- 機材は海底に固定せず、終わったらすぐ全部撤収する
- 日焼け止めは使わず、ラッシュガード等で対応する
- 水温、波高、風に基準を設け、下回ったら中止する
撮影は、海域を管理されているオーナーさんの立ち会いのもと、必要な確認と許可を得たうえで行っています。
光量を抑えれば、そのぶん撮影は難しくなります。でも、条件を先に決めて、その中でどう撮るかを考える。この順番だけは逆にしない。よその海を使わせてもらう以上、そこは譲れないところだと思っています。
水に入る前に、撮影は終わらせる
夜の海は、昼とは危険の質がまったく違います。視界が効かない。距離感が掴めない。体温も奪われます。
だから今回徹底したのは、海に入る前に撮影を組み立て切ることでした。ライトの位置、光量、カメラの設定、構図、動きの流れ。全部を陸の上で確定させてから、入ります。
そうすると、実際に水に入っている時間はごく短くなります。衣装が水を吸い切る前に、一連の撮影が終わる。
逆に言えば、この事前設計が甘いと海の中で試行錯誤することになります。それは撮る側にとっても、被写体になる方にとっても、単純に危ない状態です。
夜の海で一番大事なのは、光の技術そのものよりも、水に入る前にどれだけ判断を終わらせておけるか。今回の講座で一番時間を使ったのも、実はここでした。
そのうえで、立ち入り範囲と水深を事前に確定させ、監視体制を敷いて実施しています。基準を満たさなければ中止。撮影後すぐ温まれる導線も用意して、被写体の方の体調を最優先に進めました。
講座でやったこと
まず、黒背景の作り方から。
夜の海は、何もしなければただ真っ暗なだけの空間です。周囲の光をどう遮って、どう落として、どこにだけ光を置けば被写体が浮かび上がるのか。その原理から実践まで。
そのうえで、空の状態、波の動き、海のコンディションといった、普通はコントロールできないと思われている要素まで含めて設計していきます。自然が相手でも、意図した画はつくれる。そういう考え方です。
カメラの設定については、通常の撮影ではまず使わない、というより使う場面のないマニュアル設定を扱いました。極端に光量の少ないLEDを主光源にするから成立する設定で、一般的なセオリーからは外れています。
さらに、水面上に置いたワイヤレスストロボによるクロスライティングも実習しました。複数の光を交差させて、暗闇の中に被写体の輪郭と立体感を立ち上げる手法です。
そして繰り返しお伝えしたのが、さっきの「水に入る前に終わらせる」という話でした。
海の中でカメラを覗きながら設定を探っている限り、撮影時間は延び続けます。逆に陸で光と設定を組み切ってしまえば、実際の撮影は驚くほど早く終わる。きちんと設計できていれば、沖縄の冬でも撮影は成立します。我慢して撮っているのではなく、我慢が必要な時間まで短くできている、ということです。
技術というのは、より粘ることではなく、より早く終わらせることでもある。海はそれを容赦なく教えてくれます。
なお、具体的な数値設定やライティングの詳しい組み方は、受講生の方限定のご案内としています。ただし環境への配慮と安全管理については、上に書いたとおりすべて公開しています。

やってみて
夜の海で撮るという経験は、そう何度もできるものではありません。参加してくださった受講生の皆さん、そして被写体としてご協力いただいた方々にとっても、特別な時間になったのではないかと思います。
スタジオでも、普段のロケでも出会わない条件の中で、光を組み立てて、環境を読んで、自分の意図に近づけていく。この過程そのものが、写真の腕を確実に引き上げてくれます。
同じような撮影をご希望の方へ
海での撮影をやってみたい方、似た環境での撮影に興味のある方は、一度ご相談ください。実施できる時期や条件、必要な手続きも含めてご提案します。
撮影講座について
アーティクスでは、今回のような特殊撮影のほかにも、いろいろな撮影講座をやっています。
- 物撮り、商品撮影
- 特殊撮影
- 家族撮影
- プロフィール撮影
- 社内で撮影を内製化したい企業向けの研修
法人向け撮影内製化研修
- 半日(3時間) 講師1名 受講6名まで 150,000円から
- 1日(6時間) 講師1名 受講6名まで 280,000円から
- 7名以上は1名増につき20,000円
個人・少人数向け撮影講座
- マンツーマン 1時間あたり15,000円から(2時間より承ります)
特殊撮影やロケーション撮影の講座は、内容に応じて個別にお見積りします。出張費、宿泊費、ロケーション使用料は実費で別途申し受けます。
撮影をすべて外注し続けるのではなく、社内に撮れる人を持ちたい。そう考える企業さんが増えています。商品写真、SNS用の素材、社員のプロフィール写真。内製化できる範囲は、思っているより広いです。
今回のオーナーさんのように、自分の事業に撮影という手段を組み込みたいという方にも対応しています。
ご興味のある法人様は、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。状況をうかがったうえで、内容をご提案します。
